急性腎不全患者の生命を救うバイオ人工腎(bioartificial kidney)が数年以内に実用化される可能性が、新たな臨床試験によって示された。生体細胞を利用した尿細管補助装置(RAD)によって腎細胞の機能を短時間補助することにより、腎損傷による急性腎不全患者の死亡リスクが有意に減少し、腎機能の回復が加速されるという。
研究を行った米ミシガン大学医学部(アナーバー)内科教授のH. David Humes博士らは、10年以上前にこのバイオ人工腎の開発を始めた。この装置には、従来の腎透析のように血液を濾(ろ)過するカートリッジが含まれ、これがRADにつながれている。RADは腎近位尿細管細胞と呼ばれる腎細胞の一種で裏打ちされた中空糸でできており、この腎細胞は生命維持に必須の電解質や塩、グルコース、水を再吸収し、感染症と闘うサイトカインと呼ばれる免疫システム分子の産生をコントロールする。
今回の研究では、18〜80歳の極めて重篤な状態にある患者58人を対象とした。持続的静脈-静脈血液濾過(CVVHF)とRADを併用した患者では28日後の死亡率が33%であったのに対し、従来型の持続的腎補助療法(腎透析)を受けた患者では66%であった。28日目の時点でRAD群の53%に腎機能の回復が認められた。180日間の治療後、RAD群での死亡リスクは従来療法群の半分(50%)であった。この研究は医学誌「Journal of the American Society of Nephrology」5月号に掲載された。
Humes氏は、今回の結果は非常に有望だと述べている。急性腎不全の死亡率の高さ(50〜70%)には長い間変化がみられなかったが、この方法によって優れた治療法の開発が期待できるという。さらに、生体細胞を利用するこの新しい取り組みは、あらゆる分野の新しい細胞ベースの治療法や組織工学を用いた治療法の開発の可能性をもたらす。慢性腎不全患者の治療用として、装着型人工腎のような装置の開発が促進される可能性もあるという。
「細胞の生命維持プロセスを利用して、疾患によって障害された部分を回復させるこの能力は、医学の将来に大きな影響をもたらすものである。このような生体細胞の利用が成功したことで、われわれの取り組みの正当性が裏付けられ、幅広い疾患において細胞治療の研究が促進されると思われる」とHumes氏は述べている。
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