一般的に処方される抗コリン薬が、高齢者の思考力や日常的な身体活動を鈍くすることが、米国の2件の研究報告で明らかになった。研究では、酸逆流、パーキンソン病、尿失禁などの治療薬である抗コリン薬を服用している高齢者では、服用していない人に比べて、思考力の低下が速いことが示された。抗コリン薬には、神経細胞間のコミュニケーションを促進する脳内化学物質であるアセチルコリンが、神経細胞受容体へ結合することを阻害する働きがある。
米ウェイクフォレスト大学(ノースカロライナ州)医学部のKaycee M. Sink博士らが、平均78歳の高齢者約3,000人を対象とした研究では、Ca拮抗薬(降圧薬)、H2受容体拮抗薬(酸分泌抑制薬)、尿失禁治療薬などの抗コリン作用を有する薬剤を服用した高齢者では、正常な記憶力や思考力をもっている人でも、歩行が遅くなり、他の日常活動でも介助が必要になることが明らかになった。研究結果は、ワシントンD.C.で開催された老年医学会(AGS)年次集会で発表された。
もう1件の同じくSink氏の研究では、認知症治療薬と同時に尿失禁治療に抗コリン薬を服用している高齢者では、認知症治療薬単独の人に比べて、50%速く機能が低下することが明らかになった。被験者は、少なくともアセチルコリンレベルを上昇させて認知症を治療するコリンエステラーゼ阻害薬を連続して2製剤処方されており、うち約10%は尿失禁治療薬も服用していた。
Sink氏は「この2種類の治療薬は、薬理学的には対極にあり、認知症と尿失禁を同時に治療した場合には、一方、もしくは双方の薬効を低下させると考えられる」と述べている。認知症患者の約33%は尿失禁をコントロールする薬剤を服用しており、注意を要する。研究結果は、米医学誌「Journal of the American Geriatrics Society」オンライン4月号に掲載された。
今回の2件の研究は、高齢者に抗コリン薬を処方する際、医師はその影響(相互作用)に注意する必要のあることを示唆している。
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