vaptanと呼ばれる新しいクラスの薬剤が、月経痛、脳出血、精神障害および緑内障など、幅広い疾患の治療に有用である可能性がベルギーの研究グループにより報告され、医学誌「The Lancet」5月10日号に掲載された。
vaptanはバソプレシン受容体拮抗薬(vasopressin-receptor antagonist)の略で、体内の血液および水分量の調節に重要な役割を果たすバソプレシンホルモン系(vasopressin hormone system)を標的とすることによって作用する。経口ないし静注で投与することにより、バソプレシンの作用を阻害するという。
ブリュッセル、エラスムスErasmus大学病院のGuy Decaux博士らは、数々のサブクラスが開発されているvaptanの最新の状況についてレビューした。vaptan系薬剤の1つであるrelcovaptanは、月経痛のほか、腕や脚の血流が欠乏するレイノー病、トコライシス(tocolysis、早産につながる早期陣痛)などの治療について初期研究で肯定的な結果が認められている。
また、mozavaptan、lixivaptan、satavaptan、tolvaptanなどのvaptan系薬剤サブクラスは、身体から水分を排泄しながら電解質ないし無機塩のバランスを維持する利尿薬である。研究グループによると、ほかの利尿薬には身体の電解質バランスを維持する作用はないという。vaptan系薬剤の中には、低ナトリウム血症(生命にかかわるレベルの塩分欠乏)の治療に利用できるものもある。現在、米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けている唯一のvaptanは、低ナトリウム血症治療薬としてのconivaptan(日本国内では未承認)である。
このほか、開発中のvaptan系薬剤では、腎不全、糖尿病腎症(糖尿病に起因する進行性の腎疾患)、肝硬変およびうつ病を治療できる可能性もあると研究グループは述べている。さらに、緑内障、メニエール病(聴覚や平衡感覚に影響する内耳の疾患)、脳出血および小細胞肺癌(がん)を治療する薬剤の初期研究でも有望な結果を得ているという。
このように数々の有望な結果が認められる一方、vaptanを万能薬と呼ぶにはまだ早いとする専門家もいる。米クリーブランド?クリニック(オハイオ州)のGray S. Francis博士は「すばらしい評価の新薬だが、そこまで高い有用性があると確定するには時期尚早」と述べている。
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