糖尿病
2008-3-12/転載
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概説 糖尿病は一言でいうと、血液の中に含まれる糖の濃度が高い状態が長く続く病気です。血中の糖の濃度がある程度高くなると、尿の中にブドウ糖が漏れてくることがあるため、「糖尿病」と名づけられました。ではどうして糖の濃度は高くなるのでしょうか?
 私たちが毎日の食事で摂取する糖質(ごはん、パン、お菓子、果物など)は唾液や膵液、腸液に含まれる消化酵素によって、そのほとんどがブドウ糖となります。このブドウ糖は腸から吸収されて血液中に入ります。また肝臓からは蓄えられているエネルギー源の一部がブドウ糖として血液の中に放出されます。これらを合わせて「血糖(けっとう)」といいます。血糖は体のいろいろな細胞(脳、筋肉、肝臓など)に取り込まれて、エネルギー源として役に立ちます。通常では、血糖の値(血糖値)は非常に狭い範囲に調節されています。その調節は胃の後ろに位置し、膵(すい)臓のランゲルハンス島の中にあるβ細胞から分泌されるインスリンというホルモンの作用によって行われています。このインスリンの分泌が低下したり、その働きが十分でないと血糖がスムーズに細胞内に入っていけなくなったり、肝臓から過剰なブドウ糖が放出されたりして、その結果血糖値は高くなります。
 糖尿病にはいくつかの種類(型)があります。型の分類は以下のようになります。

●糖尿病の病型
1)1型糖尿病
 膵臓のβ細胞が破壊してしまうことで、膵臓からインスリンが出なくなってしまい発症する糖尿病です。原因は自己免疫性、ウイルス感染、特発性(原因不明)などがあります。血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンが体内で作られないわけですので、外からインスリンを補充しなければ血糖値はどんどん上がってしまいます。したがって、1型糖尿病の方は、生存のために毎日のインスリン注射が絶対に必要になります。子どもの頃に発症することが多い病型ですが、中高年の方にも認められることがあります。

2)2型糖尿病
 糖尿病患者さんの約9割がこの型に当てはまります。この型の糖尿病は親や兄弟に糖尿病にかかっている人がいることが多く、遺伝が強く関係しているといわれています。そのほかに過食、肥満、運動不足、ストレス、加齢などの複数の因子が絡み合うと、インスリン分泌が低下したり、インスリンの働きが低下して2型糖尿病を発症することになります。とくに肥満になると、インスリンの働きが低下して2型糖尿病になりやすくなります。中年以降の発症例の多くは2型糖尿病です。

3)その他の特定の機序?疾患によるもの
 非常にまれな遺伝子の異常による糖尿病や、膵臓の手術をした後インスリンが出なくなり発症する糖尿病、肝臓病や甲状腺の病気に合併する糖尿病、ステロイドホルモンなどの薬により発症する糖尿病などがあります。

4)妊娠糖尿病
 妊娠を契機に発症した糖尿病あるいは耐糖能異常(糖尿病にまではいかないが血糖がやや高めである状態)のことで、すでに糖尿病と診断されている患者さんが妊娠した状態とは区別されます。妊娠糖尿病は、[1]のちに真の糖尿病に移行しやすい、[2]胎児に巨大児などの合併症が起こりやすい、[3]子どもが将来糖尿病になる可能性がある、などの点で注意が必要です。

症状 糖尿病の症状は気づきにくく、血糖値が多少高いくらいではまったく症状のない人がほとんどです。そして、徐々に糖尿病が悪化し血糖値がかなり高くなってくると初めて、のどが渇く、トイレが近くなる、尿の匂いが気になる、できものができやすい、傷が治りにくい、足がつる、だるい、疲れやすい、食べてもやせるといった症状が現れてきます。さらに、血糖値が極めて高い状態では、昏睡(こんすい)に陥ることもあります。
 自覚症状がないからと糖尿病を放置していると、高血糖が全身の様々な臓器に障害をもたらします。とくに眼の網膜、腎臓、神経は障害を受けやすく、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害は糖尿病の「三大合併症」と呼ばれています。網膜症が起こっても最初は自覚症状はありませんが、血糖値の悪化に伴い、失明に至ることがあります。腎症も最初は少量のタンパク尿が出るだけですが、徐々に体内に水分や毒素がたまるようになり、最終的には人工透析によって血液をきれいにしたり、水分量等を調節したりしないと生きていけなくなります。神経障害が起きると、しびれ、痛み、感覚鈍麻(どんま)、発汗異常、勃起障害などが起こります。また、高血糖によって動脈硬化が進むため、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞が起こる率が高まり、また足の血管の閉塞や壊疽により足を切断しなくてはならなくなることもあります。
 症状がなくても糖尿病は徐々に進行し、恐ろしい合併症を引き起こします。糖尿病の本当の怖さは、この合併症なのです。

診断 糖尿病の診断は、主に血液検査で血糖値を調べることで行います。血糖値が正常なのか、糖尿病なのか、その中間の境界型(耐糖能異常)であるのかがはっきりしない場合には、75gの糖分を含む飲料を飲んで診断することもあります(「75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」と呼ばれる検査です)。

1)型の区分と判定基準

[1]早朝空腹時血糖値126mg/dl以上
[2]75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間値が200mg/dl以上
[3]随時血糖値※200mg/dl以上
 ※随時とは食後の任意の時間のことをいいます。食前でもかまいません。
[4]早朝空腹時血糖値110mg/dl未満
[5]75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間値 が140mg/dl未満

 [1]〜[3]のいずれかの血糖値が確認された場合には「糖尿病型」と判定します。[4]および[5]の血糖値が確認された場合には「正常型」と判定します。上記の「糖尿病型」「正常型」のいずれにも属さない場合には「境界型」と判定します。

2)糖尿病の診断
 別の日に行った検査で「糖尿病型」が再確認された場合には糖尿病と診断します。ただし、次の[1]〜[4]のいずれかがある場合は、1回の検査で「糖尿病型」であれば糖尿病と診断していいことになっています。

[1]糖尿病の典型的な症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)の存在
[2]HbA1c※(ヘモグロビンエーワンシー)が6.5%以上
[3]確実な糖尿病性網膜症の存在
[4]過去に「糖尿病型」を示した資料がある場合

 ※HbA1c:過去1〜2カ月間の平均血糖値を示す指標です。赤血球に存在し、酸素を運搬する役割を持つヘモグロビンの中で、ブドウ糖が結合しているものの割合を意味します。正常値は4.3〜5.8%で血糖値が高いほど、HbA1cは高くなります。

一般的な治療法 糖尿病の治療には食事療法、運動療法、薬物療法があります。食事療法、運動療法が治療の基本ですが、これらだけで血糖値が下がらない場合には薬物療法を併用します。HbA1cを6.5%未満にすることで合併症の頻度が少なくなることが知られており、これが最低限達成すべき目標値となります(HbA1cが6.5%という状態は、空腹時血糖130mg/dl未満かつ食後2時間血糖値180mg/dl未満という状態に相当します)。

●標準治療例
1)食事療法
 性別、年齢、肥満度、活動量、血糖値、合併症の有無などを考慮し、1日のエネルギー摂取量を決めます。決められたエネルギー摂取量内で炭水化物、タンパク質、脂質のバランスをとり、適量のビタミン、ミネラルも摂取して、いずれの栄養素も過不足ない状態にします。詳細は医師や栄養士の指示に従って下さい。標準的なエネルギー摂取量は以下のように求められます。

<エネルギー摂取量=標準体重×身体活動量>
 標準体重(kg)=身長(m2)×22
 エネルギー摂取量(kcal)=標準体重(kg)×30(kcal/kg)(軽労働または中労働の方)
 エネルギー摂取量(kcal)=標準体重(kg)×25(kcal/kg)(肥満の方)
 なお、肥満とはBMI(body mass index)=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)が25以上の状態のことをいいます。

2)運動療法
 歩行運動では1回15〜30分間、1日2回(7,000歩/日以上程度)が適当とされています。糖尿病に対する運動の効果はインスリン感受性の改善にあります。血糖コントロールが極端に悪い場合、網膜症の状態が悪い場合、腎不全のある場合、心臓や肺などの機能に障害のある場合などは運動療法を制限したほうがいいため、個々の患者さんに適した運動療法をすることが必要です。

3)薬物療法
 薬物療法には経口血糖降下剤を使用する場合と、インスリンを使用する場合があります。以下に例をあげます。

●経口血糖降下薬
 経口血糖降下薬にはいくつかの種類があります。患者さんの血糖値や体質に合わせて、[1]から[5]を単独、または併用して使用します。

[1]SU薬(スルホニル尿素薬)
 主に膵臓のβ細胞に働きかけ、インスリンの分泌を促進する作用があります。主な副作用としては低血糖があります。
 例:グリミクロン錠(40mg)  1日20〜120mg、1〜3回分服
 オイグルコン錠(1.25mg)  1日1.25〜7.5mg、1〜3回分服
 ダオニール錠(2.5mg)  1日1.25〜7.5mg、1〜3回分服
 アマリール錠(1mg)  1日1〜6mg、1〜3回分服

[2]速効性インスリン分泌促進薬
 SU薬よりもより速やかに膵臓のβ細胞からインスリン分泌を促進する働きがあり、食後の高血糖の改善に有効です。糖尿病患者の特徴である食後インスリン分泌の遅れを改善し、インスリンの総分泌量は変えません。効果は短時間で消失するため、毎食前に服用します。主な副作用としては低血糖があります。
 例:スターシス錠(30mg)  1日90〜360mg、食前3回分服
 ファスティック(30mg)  1日90〜360mg、食前3回分服
 グルファスト(10mg)  1日15〜30mg、食前3回分服

[3]α-グルコシダーゼ阻害薬
 摂取した炭水化物が分解して作られたブドウ糖は、小腸から血液中に吸収されて血糖となります。この薬剤は小腸からのブドウ糖の吸収をゆっくりさせることで食後の高血糖を改善します。この薬も毎食前に服用します。主な副作用としては消化器症状があります。
 例:ベイスンOD錠(0.2mgまたは0.3mg)  1日0.6〜0.9mg、食前3回分服
 グルコバイ錠(50mg)  1日150〜300mg、食前3回分服
 セイブル(25mg)     1日150〜225mg、食前3回分服

[4]インスリン抵抗改善薬
 主に肝臓や筋肉でのインスリンの感受性を改善することにより、血糖値が下がりやすい体質にします。ビグアナイド薬は主に肝臓に作用します。主な副作用としては消化器症状があります。チアゾリジン薬は肝臓と筋肉に作用します。主な副作用としては浮腫(ふしゅ)があり、心不全の方は服薬できません。
ビグアナイド薬
 例:メルビン錠(250mg)  1日250〜750mg、1〜3回分服
 ジベトスB錠(50mg)  1日50〜150mg、1〜3回分服
チアゾリジン薬
 例:アクトス錠(15mgまたは30mg)  1日15〜30mg、1回分服

●インスリン
 自分の膵臓からのインスリンの分泌が十分でない場合には、外からインスリンを補充してあげる必要があります。日本ではインスリンは皮下に注射します。
 食後に分泌されるインスリン(追加分泌といいます)を補充するためには、速効型インスリンや超速効型インスリンを毎食前に使用します。また、人の膵臓からは食事と関係なく一定のスピードでインスリンが分泌されているのですが、このインスリン(基礎分泌といいます)を補充するためには、中間型インスリンや持効型インスリンを使用します。速効型インスリンや超速効型インスリンと、中間型インスリンがいろいろな比率で混ざっている混合型インスリンもあります。医師は患者さんそれぞれの病気の状態により、適切なインスリンの種類と量と注射の回数を決めていきます。
 例:ノボラピッド  朝6単位、昼6単位、夕6単位
 ヒューマカート3/7  朝16単位、夕8単位
 イノレットN  眠前8単位

生活上の注意 血糖値をできるだけ正常値に近づけることで、高血糖によって起こる恐ろしい様々な合併症を防ぐことができます。そのためにも早期に糖尿病を発見し治療することが大切です。治療によって一時的に血糖値が下がったとしても、血糖値が上がりやすいという遺伝的な体質や、一度破壊されたβ細胞の機能は正常に戻るわけではありませんので、治療を中断するとすぐに血糖値は高くなってしまいます。そのためにも定期的に通院して、一生治療を続けながら生活をしていくことが大切です。

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